「夜、布団に入っても眠れない。」
「睡眠薬は手に入れたものの副作用がこわい、依存してしまわないか不安。」
上記のような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
睡眠薬は、メカニズムや作用時間によって分類があるため、効果や目的を理解したうえで服用するようにしましょう。
睡眠薬の主な種類は以下のとおりです。
作用時間によって4種類に分類される
種類 | 作用時間 | 主な副作用 | 代表的な薬剤 |
---|---|---|---|
超短時間型 | 2~4時間 | 健忘 依存症 反跳性不眠 | マイスリー ハルシオン アモバン ロゼレム |
短時間型 | 6~10時間 | 眠気・倦怠感 健忘 ふらつき | デパス リスミー エバミール レンドルミン |
中間型 | 12~24時間 | 眠気・集中力低下 ふらつき 倦怠感 | ネルボン ベンザリン サイレース ロヒプノール |
長時間型 | 24時間以上 | 認知機能の低下 筋弛緩作用による転倒・骨折 依存・離脱症状 | ダルメート ドラール |
当記事では、睡眠薬の種類ごとの副作用や飲みすぎたときの症状、服用する際の注意事項を解説しています。
毎晩眠りにつけず、睡眠薬を使うかどうか迷っている方は参考にしてみてください。
睡眠薬(睡眠導入剤)とは不眠症や睡眠の質を改善する薬

睡眠薬(睡眠導入剤)とは、不眠症や睡眠の質を改善するために用いられる医薬品です。
不眠が続くと、こころと体のバランスが崩れやすくなり、日常生活に大きな影響を与える恐れがあります。
不眠症と一口に言っても、大きく4つのタイプに分けられるので、自身はどれに当てはまるのかを確認してみてください。
- 入眠障害:寝つきが悪い
- 中途覚醒:睡眠中に何度も目が覚める
- 早朝覚醒:朝早くに目が覚める
- 熟眠障害:寝ても疲れがとれず眠りが浅い
寝つきが悪い人には、超短時間型、途中で目が覚めてしまう人には中時間型など症状に合わせて睡眠薬を選びましょう。
種類 | 半減期 | 対応する症状 |
---|---|---|
超短時間型 | 2~4時間程度 | 寝つきが悪い場合 |
短時間型 | 6~12時間程度 | 寝つきが悪い場合 中途覚醒にも効果が期待できる |
中間型 | 12~24時間程度 | 寝つきから目覚めまでの 全般に効果が期待できる |
長時間型 | 24時間以上 | 中途覚醒や早朝覚醒 |
睡眠薬は、不眠のタイプに応じて正しく使用することで、より自然な睡眠を促す手助けになります。
上記は、作用時間による分類ですが、睡眠薬はメカニズムによっても5種類に分類されます。
睡眠薬は作用時間やメカニズムにより5種類に分類される
睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系など、働き方の違いによって5種類に分類されます。
それぞれの薬には特性があり、自分の症状に合うものを使うことで副作用が起こる確率を軽減しましょう。
種類 | メカニズム | 副作用のリスク | 主な薬剤名 |
---|---|---|---|
非ベンゾジアゼピン系 | GABA受容体に作用して 脳の興奮を抑える | やや高い | マイスリー ルネスタ |
ベンゾジアゼピン系 | GABA受容体に直接作用し 強く抑制する | 高い | レンドルミン サイレース |
バルビツール酸系 | 脳の広範な抑制作用を持つ | 高い | ラボナ イソミタール |
メラトニン 受容体作動薬 | メラトニン受容体に働きかけ 体内リズムを整える | 低い | ロゼレム メラトベル |
オレキシン 受容体拮抗薬 | 覚醒物質オレキシンをブロックし 眠りを促進する | 低い | ベルソムラ デエビゴ |
睡眠薬は、種類によって脳へのアプローチ方法が異なるため、眠り方や体への影響などにも差があります。
ベンゾジアゼピン系は、強力に脳の活動を抑える反面、依存や認知機能の低下といった副作用が起きやすいことが知られています。
一方で、メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬は、自然な眠りに近い形で作用し、副作用のリスクも比較的低いとされています。
睡眠薬の分類ごとに、どのように作用して眠気を促すのかメカニズムを以下にまとめました。
脳の機能を低下させる睡眠薬
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系・バルビツール酸系
広く使われている睡眠薬で、一般的に「睡眠導入剤」といえばこのタイプを指すことが多いです。
たとえば、ベンゾジアゼピン系やバルビツール酸系は、脳の「GABA受容体」という部分を活性化させ、神経の興奮を抑え込む仕組みを持ちます。
眠りやすくなる反面、依存やふらつき、認知機能低下などの副作用が問題になりやすい傾向があります。
そのため、使用する際は、医師と相談しながら服用するようにしましょう。
自然な眠気を強める睡眠薬
メラトニン受容体作動薬・オレキシン受容体拮抗薬
最近は、体のリズムに合わせて自然な眠気を促すタイプの睡眠薬も登場しています。
たとえば、メラトニン受容体作動薬は、「眠りホルモン」の働きをサポートします。
オレキシン受容体拮抗薬は、「覚醒物質オレキシン」をブロックして、自然な眠りに移行しやすくします。
どちらの睡眠薬も副作用が少ない傾向にあり、依存性も低いとされています。
そのため、副作用が不安な方には、自然に眠りを促進するタイプの睡眠薬がおすすめです。
強い不眠に悩んでいる場合には、脳の機能を低下させる睡眠薬が検討されやすいです。
自身の不眠のタイプや体質、生活スタイルによって使用する睡眠薬を選びましょう。
睡眠薬で起こりうる副作用
睡眠薬には副作用がありますが、正しい用法で使用すれば大きな心配はありません。
- 眠気
- ふらつき・転倒
- 健忘(記憶障害)
- 反跳性不眠(離脱症状)
- 依存症
- 耐性の形成
- 認知機能の低下
現在広く使われている睡眠薬の多くは安全性が高く、症状や体質に合わせて選ぶことができます。
参考:日本睡眠学会|睡眠について
作用時間や強さの違いに応じて種類が豊富にあり、医師の管理下で適切な量を処方してもらうことが可能です。
ただし、不安を感じたときは自己判断せず、医師に相談しながら服用しましょう。
眠気
睡眠薬を使うと、翌朝まで眠気が残ることがあります。
特に、薬の成分が体に長く残る種類の睡眠薬だと、朝になっても作用が続いている場合があります。
眠気が翌朝まで残りやすい条件には以下が挙げられます。
- 長時間型の睡眠薬
成分が比較的強く、朝になっても効果が持続する - 高齢者・体が小さい方
薬の成分が体内に長くとどまりやすい - 就寝直前の服用
薬が効き始めるのが遅くなる
服用のタイミングや量を調整し、自分に合った睡眠薬の種類を選ぶようにしましょう。
ふらつき
睡眠薬を使うと、夜中や朝にふらついて転びやすくなることがあります。
睡眠薬の副作用によるふらつきは、筋弛緩作用のあるベンゾジアゼピン系で起こりやすいとされています。
薬の成分で筋肉の働きが緩むことで、足腰の筋肉の緊張がとれてしまい、ふらつきや転倒のリスクが高まります。
特に、高齢者は夜中にトイレへ行こうとして足もとがふらついたり、ベッドから立ち上がるときに転倒する可能性が高いです。
- 夜間照明をつける
- ベッド周辺を整理する
- 少ない容量で飲み始める
上記の方法を試し、ふらつきや転倒のリスクを減らして安心して就寝しましょう。
健忘(記憶障害)
睡眠薬を服用した後に、記憶が曖昧になることがあります。
睡眠薬による健忘は、薬の影響で脳の記憶をつかさどる部分の働きが一時的に弱まることで起こります。
特に、ベンゾジアゼピン系睡眠薬で多く見られるとされており、症状の例は以下のとおりです。
- 誰かに電話をかけたことを覚えていない
- 食事をしたことを覚えていない
- 部屋の電気やテレビがつけっぱなし
睡眠薬を服用した後の出来事を記憶できず、寝付く前の行動が記憶に残りにくくなります。
そのため、服用後はすぐ横になって寝る準備をしておくことが望ましいでしょう。
反跳性不眠(離脱症状)
急に睡眠薬の服用をやめると、かえって眠れなくなることを「反跳性不眠」といいます。
睡眠薬を長期間使用して体を慣らし、急に服用をやめたり減らしたりすることで起こる不眠症状
薬に体が慣れてきたタイミングで突然服用を中止することで、睡眠のバランスが乱れてしまいます。
睡眠薬の離脱症状と言われることもあり、不安や焦燥、発汗、震えなどの症状が現れます。
「昨日までよく眠れていたのに、薬をやめた途端に目がさえてまったく寝つけない」という状態は、まさに反跳性不眠と呼ばれるものです。
- 徐々に減薬する
- 医師の指示に従う
- 眠れなくても焦らない
睡眠薬の服用をやめるときは自己判断を避け、医師と相談しながら少しずつ量を減らしていきましょう。
睡眠薬を服用する際の注意事項
安心して睡眠薬を服用するためには、いくつか注意事項があります。
使い方を誤ると、上述の副作用や思わぬトラブルにつながる恐れがあるので注意しましょう。
- 車の運転を控える
- 飲酒との併用を避ける
- 服用時間を守る
- 自己判断で服用を中止しない
睡眠薬は、相互作用により副作用が出やすくなることがあるため、他の薬との併用は医師への相談が必要です。
正しい飲み方で睡眠薬を服用することこそが、効果と安全のカギになるので覚えておきましょう。
睡眠薬服用中は車の運転やアルコールの摂取を控える
睡眠薬を使っている間は、運転やお酒は控えましょう。
睡眠薬を服用しているときは、薬の作用によって集中力や判断力が落ちやすくなるためです。
- 車やバイクの運転
- 飲酒
- 高所での作業
- 集中力が必要とされる作業
運転は、翌朝になっても薬が体に残っていると、ブレーキが遅れたり反応がにぶくなったりする可能性があります。
また、飲酒によって薬の効果が強まり、転倒や健忘のリスクが高まることもあります。
安全に睡眠薬を服用するためにも、服用時は運転や飲酒を控えてください。
睡眠薬の服用を自己判断でやめない
睡眠薬は、自己判断で服用を中止しないようにしましょう。
使用を急にやめてしまうと、かえって眠れなくなる反跳性不眠や、体の不調が現れることがあるためです。
「もう眠れているから大丈夫」と思って中止すると、数日後から強い不眠や不安感が戻ってしまうケースもあります。
睡眠薬の服用を中止したい場合は、必ず医師と相談しながら進めるようにしましょう。
睡眠薬の代わりになる不眠に効果のある薬
睡眠薬が合わない場合は、別の方法で入眠をサポートすることも可能です。
不眠にはさまざまな原因があり、睡眠薬以外にも、抗うつ剤や抗精神病薬が処方されることがあります。
種類 | 主な作用 | 薬剤 |
---|---|---|
抗うつ剤 | 気分を安定させる 眠気を促す | ミルタザピン トラゾドン パロキセチン |
抗精神病薬 | 思考や感情の乱れを整える 鎮静作用が強い | クエチアピン オランザピン リスペリドン |
上記以外にも、漢方薬やサプリメントなど睡眠薬の代替として使われる薬があります。
副作用が心配なときは、無理に睡眠薬にこだわらず他の選択肢を考えてみてください。
抗うつ剤
眠りにつけないとき、鎮静作用のある抗うつ薬が使われることもあります。
鎮静系抗うつ剤は、気分の落ちこみを整えつつ、自然な眠気を促します。
薬剤名 | 効果 | 副作用 |
---|---|---|
ミルタザピン | 入眠を促す | 体重増加・眠気・口渇 など |
トラゾドン | 中途覚醒の予防 | めまい・ふらつき など |
鎮静系抗うつ薬は、うつの症状とあわせて不眠にも対応しやすく、睡眠薬に不安がある人に選ばれる傾向にあります。
ただし、眠気が強すぎたり、体重が増えるといった副作用が見られることもあるため、医師の判断が欠かせません。
抗精神病薬
睡眠薬のかわりに、抗精神病薬が処方されることがあります。
脳のバランスを整える作用があるため、強い不安や興奮が不眠の原因になっているときに効果的です。
薬剤名 | 効果 | 副作用 |
---|---|---|
クエチアピン | 寝つきがよくなる | 日中の眠気・体重増加・便秘 |
リスペリドン | 中途覚醒が減る | 筋肉のこわばり・過鎮静 など |
抗精神病薬は統合失調症の治療に使われる薬ですが、少量であれば寝つきを助ける目的で処方されます。
ただし、日中の眠気や体が重く感じるなどの副作用が出ることもあるため、慎重に使いましょう。
市販の睡眠薬(睡眠改善薬)に効果はある?処方薬との違いを解説
睡眠薬は、処方薬だけでなく、市販の睡眠薬(睡眠改善薬)にも一定の効果が期待できます。
睡眠改善薬には、抗ヒスタミンなどの成分により眠気を促し、入眠を助ける働きがあります。
市販薬 | 処方薬 | |
---|---|---|
対象 | 一時的・軽度な不眠 | 慢性的・重度の不眠 |
成分 | 抗ヒスタミン (ジフェンヒドラミンなど) | ベンゾ系 オレキシン拮抗薬など |
効果 | ||
入手方法 | 薬局 ドラッグストア | 医療機関 |
価格 | 保険適用外で 自己負担 | 保険適用で 費用を抑えられる |
主な副作用 | 口渇 倦怠感 翌朝のぼんやり感 | 転倒 依存 健忘 離脱症状 |
処方薬は、慢性的な不眠にも効果的なのに対して、市販薬は一時的に寝つきが悪い人向けです。
市販薬は、睡眠の深さや維持に強く作用するものではないため、人によっては効果を実感しにくい場合もあります。
特に、不眠の原因が精神疾患などにある場合、市販薬で改善することが難しいため、医師や薬剤師に相談しましょう。
ドラッグストアで買える市販睡眠薬は抗ヒスタミン薬と漢方薬の2種類
市販の睡眠薬(睡眠改善薬)には、大きく分けて2つのタイプがあります。
眠気を誘う抗ヒスタミン成分を使ったものと、体質改善を目指す漢方薬に分類されます。
種類 | 成分 | 向いている人 | 主な副作用 |
---|---|---|---|
抗ヒスタミン薬 | ジフェンヒドラミン | 一時的に寝つきにくい人 | 翌朝のぼんやり感 口のかわき など |
漢方薬 | 抑肝散、加味帰脾湯など | 緊張・イライラ・体のだるさがある人 | むくみ 食欲不振 など |
- 抗ヒスタミン薬
風邪薬やアレルギーの薬の眠気を利用 - 漢方薬
気持ちが落ち着く生薬を配合
上記のとおり、市販の睡眠薬と処方薬では、成分や仕組みが全く違います。
不眠で悩んでいる状態が続いている方は、病院などの医療機関で処方される睡眠薬の使用を検討しましょう。
睡眠薬の副作用が気になる方向けのよくある質問
睡眠薬は眠りに効果的な反面、副作用のリスクが気になる方も多いでしょう。
以下に、睡眠薬の副作用が気になる方向けによくある質問をまとめました。
- 睡眠薬を飲みすぎるとどんな症状が出ますか?
- 睡眠薬で太ることはありますか?
- 睡眠薬を飲むと認知症になるリスクはありますか?
睡眠薬の副作用の出やすさは人によって異なります。
正しい情報を知っておくことで、不安を和らげることにもつながるので、是非参考にしてください。
睡眠薬を飲みすぎるとどんな症状が出ますか?
睡眠薬は飲みすぎると、体にさまざまな異常が現れる恐れがあります。
- 眠気
- だるさ
- 集中力低下
- ふらつき
- めまい
重症の場合、意識障害や呼吸困難、無呼吸といった症状が現れる可能性があります。
睡眠薬を毎日飲むことは、医師の処方と指示に従っていれば、原則として問題ありません。
ただし、長期的に連続して飲み続けるのは、依存や耐性のリスクを高める可能性があるため注意してください。
睡眠薬で太ることはありますか?
睡眠薬を服用すると、一部の人で体重が増えやすくなることがあります。
薬の作用で、食欲が強まったり、代謝が落ちることがあるためです。
鎮静作用が強い薬を使っていると、日中の活動量が少なくなり、間食の回数が増えるなど生活リズムに変化が出ることがあります。
また、抗うつ薬や抗精神病薬を併用している場合は、体重増加が起きやすい傾向にあります。
睡眠薬を服用中に太ってきたと感じたときは、薬の影響を含めて医師に相談するようにしましょう。
睡眠薬を飲むと認知症になるリスクはありますか?
睡眠薬と認知症の関係については、明確な関連性は指摘されていません。
しかし、一部の調査では、睡眠薬を服用していた高齢者が、認知症を発症するリスクが高いという結果も報告されています。
参考:J-Stage|認知機能と睡眠障害の関連
また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を長期にわたって服用すると、認知症の発症リスクが高まる可能性があるという報告もあります。
睡眠薬を服用している高齢者は、定期的に医師に相談し、認知症の症状がないかを確認することが重要です。
まとめ:睡眠薬の副作用が不安な方は医師に相談しましょう
睡眠薬には副作用の可能性がありますが、適切に使うことで不安を軽減することができます。
- 眠気
- ふらつき
- 健忘
- 反跳性不眠(離脱症状)
睡眠薬には、メカニズムや作用時間によっていくつか種類があります。
睡眠薬の種類によって副作用の出方は異なり、症状や体調に合わせて薬を調整することが可能です。
副作用が現れた場合には、自己判断で服用を中止せず、医師に相談するようにしましょう。