百日咳とは
百日咳は 百日咳菌(Bordetella pertussis)
による呼吸器感染症です。飛沫感染で広がり、
特に乳幼児が重症化しやすい疾患です。日本では
四種混合(DPT-IPV)ワクチン接種の普及により
患者数は減少しましたが、免疫の低下に伴い成人・
学童での感染の増加がみられ、今年は兵庫県でも
百日咳が流行しております。百日咳の潜伏期間は
7-10日で感染力は強いです。
どんな症状がでるの?
百日咳は典型的には次のような経過をとります:
- カタル期(1~2週間):
軽い咳、鼻汁、微熱。一般的な風邪症状に似ています。 - 痙咳期(カタル期後2~3週間):
特徴的な「連続的で間を置かずに起こる激しい
咳発作」。咳発作後、息を吸う際に「ヒュー」
という笛声様吸気音(whoop)が聞かれ、しばしば
嘔吐を伴います。夜間に増悪することが多いのが
特徴です。
成人の百日咳はこのような典型的な
咳症状が現れないことも多いとされています。 - 回復期:
咳は次第に軽快するが、しばらく残存することが
あります。
どんな検査をするの?
百日咳の診断に用いられる検査には以下があります:
- 培養検査:
感度約50~60%、特異度ほぼ100%。
確定診断のために有用だが結果に日数がかかる。 - PCR検査:
感度90%以上(成人では感度が低い)、
特異度はほぼ100%。症状発現後3週間以内が適応。 - 血清抗体検査:
- 1. 抗IgM抗体:
感染後1〜2週で上昇開始し、2週でピーク。
感度50〜70%、若年者で陽性率高い。
数週で減少。 - 2. 抗IgA抗体:
感染後2〜3週で上昇開始し、IgMより遅れる。
ピークは約3週。数か月(〜7か月)持続。 - 3. 抗PT-IgG抗体:
感染後2週で上昇開始、4〜6週でピーク。
約5か月で90%以下に低下。
- 1. 抗IgM抗体:
ワクチンの有効性
日本で用いられるDPT-IPVワクチンの有効率は
約80~85% です。ただし、免疫は時間と
ともに減衰し、ワクチン接種後 約5年程度で
有効性が低下 し始めるため、学童期後半や
成人では免疫が低下し、無症候性感染や軽症例が
家庭内感染源となることがあります。
どんな治療をするの?
百日咳の第一選択薬は マクロライド系抗菌薬
(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど) です。
最近マクロライド系抗菌薬に耐性を持った百日咳菌も存在しており、
バクタ を使用する機会が増えています。
治療の有効性は発症時期によって異なります:
- カタル期(発症から約2週間以内):
抗生剤治療が最も有効な時期です。
症状の軽減に加えて感染拡大防止効果が期待されます。 - 痙咳期(発症後2~3週間):
抗生剤により菌排除は可能ですが、咳を
軽減させる効果は乏しいことが多いです。
感染伝播予防のためにはこの時期でも投与は推奨されますが、
発症後3週間を経過すると抗生剤による効果は
期待できなくなります。
一般的な咳止めの効果が期待できないことも多く、
竹茹温胆湯など漢方薬等を処方することがありますが、
咳が完全に消失するまで数週間かかることもあります。